USER'S VOICE
中垣繁幸さん・宮之原拓男さん × BIRDY. カクテルシェーカー
WEBマガジン「BAR TIMES」連動企画
ふたりのトップバーテンダーに聞く
“BIRDY.シェーカーの魅力”
球体型のシェイプや0.1ミクロンの精度で施された研磨など、これまでにない技術と画期的なアイデアでバー業界に大きな反響を与えたBIRDY.のカクテルシェーカー。今や日本はもとより海外のバーテンダーにまで浸透し、国内の多くのバーでも目にするようになりました。2016年12月、「BAR TIMES」様の協力のもと、発売から3周年を記念した座談会を実施。BIRDY.を生み出したブランドマネージャー横山哲也が、日頃BIRDY.を愛用しているふたりのトップバーテンダー、中垣繁幸さんと宮之原拓男さんにその使い心地や味わいへの影響など率直な感想や意見を聞き出しました。
(撮影協力/BAR ORCHARD GINZA)
空気の入れ方とか泡の立ち方とか、
これにはこれの振り方がある
横 山 早いものでBIRDY.のシェーカーを発売して丸3年になります。今日はお二人に実際の使い心地など本当のところはどうなのかぜひ教えてもらいたいと思っています。早速ですが、中垣さんがBIRDY.のシェーカーを買われたのは発売後すぐでしたね。まず初めにどう感じられましたか?
中 垣 私はそれまでボディが真っ直ぐなタイプのシェーカーを使っていたので、初めてBIRDY.でシェイクした時は驚きました。氷の動き方が全然違ったので。私たちバーテンダーは技術を駆使して一生懸命シェーカーの中で液体を回すことをしてきましたが、これは極端に言うと放っておいても回ってくれる(笑)。球体のフォルムは理にかなった設計ですよね。だから、以前とシェイキングの方法が変わったと思います。
宮之原 僕は割と遅くて、発売から1年くらい経った後でした。中垣さんから勧められても、「いや、僕はシルバーのシェーカーを使っているんで」って断っていました(笑)。それには理由があって、シルバーだと熱伝導率が低いから思い切り振り込めるけど、ステンレスはそうはいかないんじゃないかって。でもある時、BIRDY.のバースプーンを使っている人がいてちょっと触らせてもらったら、あっこれだ!って瞬間的に思ったんです。回しやすいし抜き差ししやすい、ここまで考えられているならシェーカーも何かあるに違いないと思って慌てて買った次第です(笑)。中垣さんが言うように今までと同じ振り方ではなくて、空気の入れ方とか泡の立ち方とか、どう動かせばおいしくなるのかこれにはこれの振り方があると思っています。
中 垣 それと製品としての剛性が圧倒的に違いますね。以前は同じシェーカーを6つくらい買い揃えていましたが、使っていくうちにクセがつくのかこのボディにはこのストレーナーでなきゃうまく噛み合ないっていう具合になってくる。全部同じシェーカーのはずなのに。だから洗う時も他と混ざらないようにしていました。でもBIRDY.はランダムに組み合わせてもずれがない。この精度と頑丈さはすごいですよ。
酸が上がらないから、味見と出来上がりが同じ。
今までよりも味のコントロールがしやすくなった
中 垣 不思議に感じたのはレモンやライムなど酸味がキーとなるギムレットやダイキリのようなカクテルを作った時です。私はシェーカーに材料を入れて一度味見をするんですが、今までは出来上がりの味を想像して酸を抑える調合をしていました。要するに、白ワインで言うと温度が下がると酸が高くなるのと同じで、シェイクして液体が冷えたから味見した時よりも酸が上がると思っていたんですね。ですが、BIRDY.の場合は味見する前と出来上がりでは味が変わらない。かえって味のコントロールがしやすくなりました。何の作用によるんでしょうか?
横 山 9割くらいは研磨によるものだと思っています。ミクロ・ナノレベルの話ですが、液体分子のひとつを人間に例えると一般的なシェーカーの内側表面にはまるで8,000m級のエベレストのような切り立った凹凸があります。イメージとしてはささくれ立っているような。BIRDY.は300〜500mの丸くてなだらかな山なんですね。シェイクするたび一回一回エベレストに登るのか、なだらかな山を登るのかの違いが、分子レベルでかかるストレスに変化を与え味に影響するのだと思います。例えば、刺身もしっかりと研いだ包丁で切った方が面が潰れず、細胞も壊れず、食感もよくなるのと同じで、液体にも同じような効果が現れるんじゃないかとシェーカーを開発する前に思ったんです。雑味が出ないとか、酸味が高まらないとか。でも実際に発売してみると「BIRDY.は酸が立たないから扱いが難しい」と結構言われて悩んだんですが、中垣さんが真逆の視点でおっしゃってくれたので目からウロコでした。
中 垣 しかも酸だけじゃなくて、りんごとか梨の果汁を絞ってシェイクすると褐色変化の度合いが違う。白いまま出てくるんです。
横 山 フルーツカクテルにも使えますか?
宮之原 さすがにフルーツを中で潰してカクテルを作るとなるとストレーナーに詰まってしまうのでやはりボストンシェーカーやミキサーを使います(笑)。でも、高さのあるボストンシェーカーは空気が入りやすいって言われますけど、BIRDY.でも十分空気が入りやすいので振り方さえ考えればボストンの代用ができると思います。
中 垣 スタンダードカクテルはほぼBIRDY.だけでいけますね。私はすでに8つくらい持っています(笑)。
宮之原 すごいですね! BIRDY.の宣伝マンみたい(笑)。うちも中垣さんほどではないですが、スリーピースは全部BIRDY.に変えました。特にCS350はコンパクトなので女性でも持ちやすいし、男性でも手のひらにすっぽり収まるので自在に操れるのがいいですね。
シェーカーの底にぶつかって液体が戻ってくる時
予測した通りに跳ね返ってくれる球体構造
横 山 シェーカーとしての使い勝手はどうですか?
宮之原 内側が研磨されてスムースになっているので、氷を回しながらシェイクする時はゆっくり、逆にガチガチに組んだ氷の間に液体を通す時は角度を付けて底に放り込んでいく感じとかいろいろな方法があります。底が平らだから液体の入り方もバシャバシャってならない、なんかギューっと入っていく感じです。
中 垣 球体構造なので液体がシェーカーの底にぶつかって戻ってくる時予測した通りに跳ね返ってくれるんですよね。肩のあるシェーカーの形状だとその跳ね返りが違う方向に流れちゃってロスがあるんです。
宮之原 そうそう。そうなるとおのずと振り方も変わってきちゃって。
中 垣 それともうひとつ、BIRDY.は一般的なシェーカーに比べると少し厚みがあるので霜が付くのが遅く感じます。霜が付いた方が演出としてはすごく冷たくなったように見えますがそれだけ冷気を奪われているってことですから。冷えるという意味でも効率はいいし、しかも手の温度の影響も受けにくいと思います。
横 山 なるほど。
中 垣 また、ボディのエッジを見ると分かりますが、BIRDY.は切断面が丸く研磨されているけど、一般的なシェーカーはスパっと切断されています。何年も使っていると氷が当たってエッジが波形に削れてくるんです。カクテルの仕上がりに影響がないとは考えにくいですね。
宮之原 ガンガン洗って、ガンガン使う。圧倒的な強度と味のコントロールがしやすいという点でBIRDY.はバーテンダーにとって本当に使いやすいバーツールだと感じています。
中 垣 もう結構手放せない感じです(笑)。
横 山 今日は貴重なご意見を聞かせていただき、ありがとうございました。
(2016年12月)
中垣 繁幸さん
『バロッサ コクテリエ』(岐阜県岐阜市)オーナーバーテンダー。90年代はじめから様々なカクテルコンテストに出場し、多くの好成績をおさめる。2007年、世界初の真空調理器を使用したカクテル「スーヴィード・カクテル」を発表し話題に。
宮之原 拓男さん
『バー オーチャード ギンザ』(東京銀座)オーナーバーテンダー。大学時代にバーテンダーを志しホテルオークラ神戸に入社。多くのカクテルコンテストに挑戦し高い成績をおさめる。液体窒素などの調理器具を取り入れた最新スタイルのカクテルを追求する。
横山 哲也
BIRDY.ブランドマネージャー。愛知県豊田市にある自動車部品メーカー横山興業株式会社の商品企画室 室長。横山興業がタイに進出した際に抱いた日本のものづくりに対する危機感から、自社で事業を立ち上げられないかと考えたのがきっかけで、自社の持つ研磨技術で画期的なカクテルシェーカーを開発。