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名古屋市 / 純米酒専門YATA栄店 / 森澤 浩さん × BIRDY. TABLE デキャンタ

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純米酒と「DC700 デキャンタ」の相性を考える
2人だけのワークショップ

2017年3月に発売された「DC700 デキャンタ」は、数回スワリングするだけで簡単にデキャンタージュができるアイテム。デキャンタージュといえば、まずワインをイメージする方が多いと思いますが、実は、日本酒や紹興酒、ウィスキーなどにも使える手法です。しかし、星の数ほどあるアルコール類だからこそ、その相性や用途は、まだまだ追求していく必要があるかもしれません。
そこで今回は、「純米酒専門YATA 栄店」の店主でSSI認定きき酒師の森澤浩さんと、BIRDY.ブランドマネージャー横山哲也、2人だけのワークショップを開催。純米酒と「DC700 デキャンタ」との相性を探ってきました。
(撮影協力/純米酒専門YATA栄店)

横 山 「DC700 デキャンタ」を発売して1年。もとはワイン向けに企画した商品なのですが、使っていくうちに実は用途に幅があるのだなということがわかってきました。そこで、「日本酒でももっと試したいな」と思っている時に、ちょうど森澤さんからお声がけいただいたのは渡りに船でした。

スワリングの作法は?

森 澤 では、デキャンタージュしていきましょうか。

横 山 結構ゆっくり回されるんですね。

森 澤 「DC700 デキャンタ」の場合、ゆっくりと回した方がいい変化を見せてくれるように感じています。

横 山 確かにワインも色々と検証した結果、ゆっくり回した方が、バランスがいい傾向がありました。

森 澤 私もワインと比べてみたことがあるのですが、日本酒の方がワインより短い回数で味が変化するように思います。

横 山 日本酒の種類によっては、スワリングせずに注いですぐグラスに移し替えるだけでもいいのかもしれませんね。「DC700 デキャンタ」の場合、液体が分子レベルでずっと動き続けているんです。それゆえ、液体の質によっては疲れてしまうものもあるので。

森 澤 そうですね。古酒などは、もともと熟成されているものなので、あまり時間経過させない方がいいように感じています。

デキャンタージュ後に見せる純米酒の変化

森 澤 今回はこの8本で比較検証。一番右の華やか系から、しぼりたて、生酒、生酛や山廃も試し、最後、古酒と貴醸酒で締めます。「DC700 デキャンタ」を使う前、使ったあとの感想はいかがですか?

横 山 「伝心」は変化がすごいですね。華やかな花吹雪のような状態がおさまってコクが出る。個人的な好みでいうと、デキャンタージュした方が、厚みがあって好みですね。

森 澤 ただ、お客様によってはデキャンタージュする前の方が好きだという方もいらっしゃったので、これも好みによりますね。実は私自身も、甘さがどっしりと重くなるので、そのままの方が好みでした。

横 山 温度変化してくると重力も変わってきますね。一概には言えませんが、例えば、女性にサーブするときはこのままで、男性にはくぐらせて提供といった具合に好みによって使い分けるのもいいかもしれませんね。貴醸酒「モンスーン」なんかも、デザートワインのような味わいで面白いと思います。

森 澤 「モンスーン」も甘味のボリュームがふくらんで、すっきりクリアになる感じ。そのままでも、デキャンタしてもいい変化を見せてくれる。これ、どっちもおいしいな。

横 山 こちらも、合わせるものを選ぶように感じました。例えば、そのままだったら和菓子、デキャンタ後はコクのある洋菓子といった具合に。日本酒のいい変化とともに、ペアリングを楽しむのも面白そうです。 逆に、「純米中汲みしぼりたて」は、コクやとろみが出すぎてしまったかもしれません。つまみは塩だけで、ずっと飲み続けるのならデキャンタ後でもよいのかもしれませんが。

森 澤 「しぼりたて」など、時期的なお酒はフレッシュな状態で楽しむのがベストということでしょうね。

横 山 いい変化を感じられたのは、「生酛 小右衛門」や、「不老泉の三年熟成 山廃仕込」。複雑さの中に秘められていたものが、花開いたといった印象。どちらも偶然、酒米は雄町でしたが、酒米が関係しているのでしょうか。

森 澤 酒米の良し悪しというよりは、製造工程が関係しているのではないかと想像しています。生酛造りは自然の乳酸菌の力を活用した造り方。山廃造りも、同じく乳酸菌を育成する昔ながらの醸造方法です。それだけに複雑な味わいや香りを秘めた日本酒。それらが開くんじゃないかと思うんです。

横 山 なるほど。山廃仕込は、味がすごく変わったわけではないのですが、木のニュアンスがより感じられるようにもなりました。

森 澤 あ、こちらの蔵は木桶を使って搾っているんです。複雑なのがクリアになってはっきりした感じですね。 あと、まるでブランデーやウィスキーのような丸みや余韻を出してくれたのが「義侠」。平成14年に造られた16年ものとあって、すごい!の一言ですよね。

お燗との相性はいかに!?

森 澤 お燗も試してみますか?

横 山 お燗は、どういった手順でされるんですか?

森 澤 デキャンタージュしたあとに、お燗をしています。お燗したものをデキャンタしたこともあったのですが、味がくずれるというか味がバラバラになってしまう。「DC700 デキャンタ」の場合、デキャンタしてからお燗した方が断然によかったです。

横 山 アルコール度数が弱まる感じなんですか?

森 澤 お燗の適温は日本酒によって違ってくるのですが、40℃からものによっては60℃越えすることもあります。アルコールの沸点は78.3℃なので、そうそう飛ぶことはないので、アルコールが弱まった感じではないですね。お燗というのは、お酒の分子に水分が集まり、丸くなるという化学変化があるので、そういったことが関係しているように思います。

横 山 もしかしたら、集まった水を大量に供給された酸素がひっぺがしてしまうのかもしれませんね。だったら、デキャンタージュはお燗の前にするのがいいのかもしれませんね。

森 澤 しかし、お燗は面白いけど難しい。「モンスーン」はデキャンタ後のものは苦味を出してしまったのですが、これは私があと1度低く温めていたら、おいしく変化していたのかもしれない。

横 山 でも「生酛 小右衛門」はうまく変化したように思います。色も気持ちオレンジっぽくなったような。丸くすべり込んでくる感じも心地いい。なにより旨味が増した。うーん、ダシを飲んでるみたい。

結論までの道のりは遠い!?

横 山 すべてがベストというわけではないですが、面白い変化が見られましたね。米の旨みが生きたものもありましたし。

森 澤 香り系の日本酒は、明らかにふくらむので誰がデキャンタージュしてもわかりやすく変化してくれて面白かったですね。ただ、蔵元さんが伝えたい味を曲げてしまっているのではないかというのは心配なところ。開栓してどれくらい空気に触れたら、蔵元さんが意図している味になるのかということも含めて、追及していきたいです。今回は、さまざまな日本酒でデキャンタージュによる変化を楽しみましたが、安易に酒米や醸造方法などから、その相性を語る段階ではない。日本酒の成分や酵母なども解析しないと語りつくせないように感じました。
とはいえ、お酒には遊び心が必要。日本酒の味をよく知っているお客様が、味の変化を楽しむには「DC700 デキャンタ」は面白い道具だと思っています。

横 山 確かに、「これをやったらおいしいですよ」というほど簡単なものではなく、「DC700 デキャンタ」は、向き合えば向き合うほどリアクションしてくれる道具。今後、もっと検証していきたいと思います。

(2018年3月)

日本酒をデキャンタージュ / BIRDY. TABLE DC700 Decanter

16年熟成の義侠をBIRDY.デキャンタを使ってデキャンタージュしてみました。香りが華やかになり、旨味が凝縮します。

森澤 浩さん

YATA名古屋栄店店長。SSI認定 きき酒師。大学卒業後はホテル、リストランテ、ワインのインポーター、酒屋のセールスと様々な形で飲食業界と接点を持ち、修業を重ねてきた。ワイン愛好家として生活してきたが、YATAに出会った事をきっかけに日本酒に心酔。店長を務めるまでになった。


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